検察庁法。 検察庁法改正法案の内容をわかりやすく紹介!芸能人が講義する理由

検察庁法改正案の危険性とは…知っておきたい“検察”の役割

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自民党は、今週内にも衆議院を通過させる意向ですが、この検察官の定年延長については批判的な意見が強く、ツイッターでは何百万もの国民が反対の意見を表明するという異常な事態になっています。 他方、多くの批判的意見があるものの、定年の引き上げあるいは延長は社会一般の流れでもあり、法案について何が問題なのか分からないといった声も多く聞こえてきます。 改正法案の条文がかなり複雑で難解なものになっており、一般国民も一読しただけではその内容が明確に把握できないことも議論が混乱している一因ではないかと思われます。 そこで以下では、この改正法案の重要部分について、分かりやすく読みくだいて問題点を明らかにしたいと思います。 内閣官房:(第201通常国会)• 概要()• 要綱()• 法律案理由()• 新旧対照表()• そして、とくに検事総長と次長検事、それに検事長は、内閣に任命あるいは罷(ひ)免する権限があり、天皇が認証(正当な手続きによったものだと確認すること)することとなっています。 ここから、検事総長、次長検事、検事長は、一般に〈〉と呼ばれて、特別な存在とされています。 検事総長は、最高検察庁の長ですが、同時に全ての検察庁のトップであり、全職員を指揮監督しています。 次長検事は、最高検察庁に所属し、検事総長を補佐する役目です。 検事長は、全国に8箇所設置されている高等検察庁のトップであり、その下に全国50箇所に設置された地方検察庁と、さらにその下に設置されている区検察庁の職員を指揮監督しています。 なお、地方検察庁の長は 検事正と呼ばれ、地方検察庁とその下にある区検察庁の職員を指揮監督しています。 検察官の定年ですが、現行検察庁法の定年に関する規定は、きわめて単純明快です。 検察庁法第22条 検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する。 そして、今回改正法案で問題になっているのは、これらの検察官の定年引き上げと定年延長です。 具体的に改正法案の内容を見ていきます。 改正法案における定年と延長の仕組み まず、検察官の定年は、現行よりも2歳引き上げられて一律 65歳になります(22条1項)。 ただし、任命権者である 内閣は、〈認証官〉に対して、国公法81条の7の規定(国家公務員の65歳定年の延長を規定した条文)の読み替え(下記参照)によって、 内閣の定めによってその職のまま1年まで勤務させることができます(22条2項)。 したがって、これらの職にある検察官は、66歳まで勤務することが可能になります。 ( 読み替え規定について誤解があり、この部分は誤っていました。 次の文章に、お詫びして訂正します。 ) まず、検察官の定年は、現行よりも2歳引き上げられて一律 65歳になります(22条1項)。 ただし、任命権者である 内閣は、検事総長に対して、国公法81条の7の規定(国家公務員の65歳定年の延長を規定した条文)の読み替え(下記参照)によって、 内閣の定めによってその職のまま1年まで勤務させることができます(22条2項)。 したがって、これらの職にある検察官は、66歳まで勤務することが可能になります。 そして、これは最大3年まで延長可能です(国公法81条の7第2項[の読み替え])。 つまり、検事総長は最長で 68歳まで勤務が可能だということになります。 他方、 法務大臣は、〈次長検事〉と〈検事長〉が63歳になったときは、翌日にその者を次長検事あるいは検事長から解き一般の検事に任命します(22条4項)。 これがいわゆる〈 役職定年〉です。 ただし、 内閣は、63歳になった〈次長検事〉〈検事長〉を、職務の遂行上の特別の事情を勘案して、公務の運営上著しい支障が生じると認めるときは、その職のまま1年まで延長させることもできます(22条5項)。 つまり、63歳の役職定年が、 内閣が認めるときは特別に1年の延長が可能になり、これはさらにもう1年まで(65歳まで)延長できることになりました(6項)。 そして、この期限が来たときは、延長した〈次長検事〉〈検事長〉はその職を解かれ(65歳未満の場合は)一般の検事となるわけですが、22条の2項、つまり国公法81条の7の規定の読み替えによって定年延長された場合はこの限りではないとされ、国公法によってさらに1年の役職の延長が認められることになっています。 ちょっとややこしいですが、図解すると次のようになるかと思います。 c sonoda 最初の画像は誤っていましたので差し替えました。 なお、上記とは別に〈検事正〉については、以下のような規定になっています。 63歳になった検事は検事正にはなれない。 (9条7項)• 検事正は、63歳で役職(検事正)を辞する。 (9条2項)• 法務大臣の定める準則によって、63歳の検事正を1年まで延長することが可能(9条3項)• 3項と4項の規定によって延長した検事正は、期限の翌日に他の職を命じる。 ただし、国家公務員の定年(65歳)に達した者であっても、その職のまま1年まで延長可能(国公法81条の7第1項)。 なお、これは内閣の定める場合に限る。 例外なく年齢でスパッと職を切るということは、すべての犯罪についての捜査権を持ち、公訴権を独占し、起訴するかどうかの裁量も一手に委ねられている検察官が、いかなる者や組織からも独立性を保ち、癒着が生じないようにするためであるといわれています。 検察官は頻繁に全国を異動しますが、これも独立、廉潔性を保つためであるといわれています。 定年の引き上げについては、年金支給年齢が段階的に上がることにつれて、一般社会の定年もそれに連動することが望ましく、国家公務員の定年を段階的に引き上げていこうという流れがありました。 さらに、裁判官の定年が65歳であるため、検察官もこれに合わせるべきだという意見もありました。 そうして準備された 最初の検察庁法改正法案(本年1月17日以前)は、 「検察官は、年齢が65年に達した時に退官する。 次長検事及び検事長は、年齢が63年に達したときは、年齢が63年に達した日の翌日に、検事に任命されるものとする。 」 という、定年の引き上げと役職定年制を規定したきわめてシンプルなものでした。 それがその後、東京高検黒川弘務検事長の定年延長問題が起こり、政府は、国家公務員法の規定を(脱法的に)持ち出して、強引に認めてしまったのでした(これは、63歳の定年直前であった黒川検事長を、65歳定年の検事総長にするためだといわれています)。 この事件があってから出てきた検察庁法改正法案は、定年引き上げと役職定年制だけではなく、内閣の判断による定年延長と役職延長を認めるというものでした。 そこで、この法案については、黒川検事長に対して行った脱法的な延長を、法改正といういわば後付けで正当化するものではないのか、そして、そこに内閣の強い関与を規定することによって、ときの政権に都合のよい者についてだけ定年延長と役職延長を認めることになり、検察への政治介入を強めることになるのではないのかといったようなことが懸念されるものとなっています。 これは上の図を見ていただければ、一目瞭然ではないでしょうか。 今年の2月8日が誕生日で、その日に退職する予定であった黒川検事長は、定年が半年延びました。 8月に検事総長になられているかどうかは分かりませんが、検察庁法改正法が成立すれば2022年4月1日が施行予定日です。 つまり、そのときには黒川検事長は65歳をすぎているわけで、実は改正法の恩恵は受けられません。 だから、今回の改正は、黒川問題とは一応関係はないといえます。 しかし、黒川問題と改正法案には因果関係はあるでしょうし、これが成立すれば、政府が検察に今以上の強い影響力をもつことになることは否定できないと思います。 ただし、第81条の5第1項から第4項までの規定により異動期間(これらの規定により延長された期間を含む。 )を延長した職員であつて、定年退職日において管理監督職を占めている職員については、同条第1項又は第2項の規定により当該定年退職日まで当該異動期間を延長した場合であつて、引き続き勤務させることについて人事院の承認を得たときに限るものとし、当該期限は、当該職員が占めている管理監督職に係る異動期間の末日の翌日から起算して3年を超えることができない。 検察庁法第22条第5項又は第6項の規定により次長検事又は検事長の官及び職を占めたまま勤務をさせる期限の設定又は延長をした職員であつて、定年に達した日において当該次長検事又は検事長の官及び職を占める職員については、引き続き勤務させることについて内閣の定める場合に限るものとする。 1 前条第1項の規定により退職すべきこととなる職員の職務の遂行上の特別の事情を勘案して、当該職員の退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由として 人事院規則で 内閣が定める事由 2 前条第1項の規定により退職すべきこととなる職員の職務の特殊性を勘案して、当該職員の退職により、当該職員が占める官職の欠員の補充が困難となることにより公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由として人事院規則で定める事由 2 任命権者は、 前項の 前項本文の期限又はこの項の規定により延長された期限が到来する場合において、 前項各号 前項第1号に掲げる事由が引き続きあると認めるときは、 人事院の承認を得て 内閣の定めるところにより、これらの期限の翌日から起算して1年を超えない範囲内で期限を延長することができる。 ただし、当該期限は、 当該職員に係る定年退職日(同項ただし書に規定する職員にあつては、当該職員が占めている管理監督職に係る異動期間の末日) が定年に達した日(同項ただし書に規定する職員にあつては、年齢が63年に達した日)の翌日から起算して3年を超えることができない。 3 前2項に定めるもののほか、これらの規定による勤務に関し必要な事項は、 人事院規則で 内閣が定める。 [参考URL].

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「#検察庁法改正案に抗議します」 理解した上での行動ですか

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【ニュースの核心】 政府が通常国会に提出している検察庁法改正案について、野党や左派マスコミが反対している。 彼らが「中立公正であるべき検察に対する政府の介入だ」などと叫んだので、先週末、いわゆる「著名人」もツイッターで反対の声を上げる騒ぎになった。 だが、彼らは何か勘違いしているのではないか。 というより、「ためにする」議論とはこのことだ。 そもそも、この話は検察庁法だけを改正するのではない。 自衛隊員や会計検査院検査官も含めて、国家公務員全体の定年延長や待遇改善のために、多くの関係法改正案がまとめて提出されている。 なぜ、国家公務員の定年を延長するのか、と言えば、民間と同じく年金支給開始年齢が引き上げられるからだ。 検察官だけ定年延長しないとなったら、彼らだって労働者なのだから、怒るだろう。 それはともかく、左派が騒いでいるのは、次のような理屈であるらしい。 「黒川弘務・東京高検検事長は『政権に近い』と言われている。 1月末の閣議決定で、2月だった定年を8月まで半年間延長したうえ、今度は法律まで変えてしまえば、いまの稲田伸夫検事総長が退官した後、黒川氏を後釜の総長に据えられる。 安倍晋三政権は自分の意のままに検察を動かそうとしているのだ」 これは一見、もっともらしく聞こえる。 国会で野党に追及された大臣にも答弁の言い間違いがあったので「疑惑」に輪をかけた。 だが、根本のところが間違っている。 稲田検事総長の任期は、65歳の誕生日を迎える2021年8月までだ。 稲田氏が誕生日まで総長を務めれば、黒川氏の目はなくなる。 検事総長は「就任2年(7月)で退任」という不文律があるらしいが、左派マスコミが報じたように、本当に「法務検察も危機と思っている」なら、そんな慣例にとらわれている場合ではないはずだ。 そもそも、定年延長を定めた改正検察庁法案が今国会で成立したとして、施行されるのは「22年4月1日」である。 これは、検事長らにも適用される国家公務員法改正案の附則第1条で事前に決まっている。 そうだとすれば、黒川氏は改正法施行までには、65歳を過ぎて退任してしまうので、いずれにせよ、総長就任の可能性はなくなってしまうのだ。 つまり、検察庁法の改正と黒川氏の就任問題は、まったく関係ない。 大体、法律に基づく制度改革と検察庁人事の話をごっちゃにして議論する方がおかしい。 「一般には、法施行日のような細かい話は分からないだろう」とタカをくくって、左派が宣伝し、それに「著名人」が乗ったのだとしたら、実に残念だ。 かねて「著名人」には左派ファンが多いと知ってはいたが、私は「無垢な(?)彼ら」を操った野党やマスコミの方が罪深い、と思う。 私が新聞記者時代、法改正と聞いても、改正案の本文どころか、簡略化した要綱さえ読んだことがない記者がほとんどだった。 彼らの不勉強と紋切り型の記事に振り回される読者が気の毒になる。 1953年、千葉県生まれ。 慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。 政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。 政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。 著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。 ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。

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無関係な「黒川人事」と「検察庁法改正」で騒ぐ左派… 無垢な著名人を操った野党やマスコミは罪深い:イザ!

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【2020. 12[21:34] 改正案の内容について整理表を追加しました。 また勤務延長の読み替えへの言及がわかりにくいということでその点も整理表とともに説明を加えました。 】 【2020. 10[23:05] 附則について末尾に追記しました】 昨晩からものすごい勢いで、「 検察庁法改正案に抗議します」タグが伸び、ずっとトレンドに入っているのですが、法曹の端くれとしましては、正確に何に抗議をしているのかを確認したい。 同時に、政府の考えも確認したい。 そういうわけで、端的ではありますが、いろいろな誤解を解くと同時に、できるだけ冷静に事の本質を考えてみたいとおもいます。 しかし、ご存知のとおり、検察官は政治家を含めて刑事訴追をする権限を持っており、したがって極めて高度な独立性が担保されている必要があります。 かつて政財界を巻き込んだロッキード事件、リクルート事件、ゼネコン汚職事件などがありますが、こういった政治がらみの案件を検察庁が捜査、起訴できるのは政治から独立した組織であるからです。 ・検事総長:65歳 ・検察官(検事長含め):63歳 検察庁法が定める条文は端的に以下の一文のみです。 検察庁法 第二十二条 検事総長は、年齢が六十五年に達した時に、その他の検察官は年齢が六十三年に達した時に退官する。 なお、勤務延長制度が認められるのがどういう場合かというのは、人事院規則で定められています(詳しい要件などについての概要資料は)。 理由としては、カルロス・ゴーン被告人や当時まだ捜査中であったIR汚職関連を含めて、「東京高等検察庁管内において遂行している重大かつ複雑困難事件の捜査公判に対応するためには、…黒川弘務の検察官としての豊富な経験・知識等に基づく管内部下職員に対する指揮監督が必要不可欠」と政府が判断したとのことでした。 ここは細かな議論をしても良いのですが、端的に問題点のみを上げると、 1 解釈変更を行うにあたる立法事実が存在したのか(なぜ急遽このような解釈変更を行うにあたったのか) 2 解釈変更を行う正当なプロセスは行われたのか(後付けで行ったのではないか) 3 なぜ政府参考人が矛盾となる答弁をしたのか(解釈変更はしていないとの答弁。 後にいい間違えたと修正) 4 解釈変更をするに際して、なぜ法務省行政文書取扱規則上の文書ではないと判断して、口頭決裁に留めたのか といった疑問点が噴出してしまい、ちょうど 1 に関連して、黒川検事長は政権に近い立場であったこと、次期検事総長として黒川氏を任命するためには半年間の勤務延長をせざるを得なかったことから、このような解釈変更を行ったのではないかという批判がなされました。 2.改正案の内容 次に、今国会に提出されている改正案の内容を確認します。 検察庁法改正案単体ではなく、複数の関連法案が束ね法案として提出されています。 ただし、これについても、60歳以降も職位を引き続き維持する特例を設ける。 この国家公務員法の改正案(定年の引き上げ)は、2008年頃から検討が始まり、人事院が2018年にを提出することで、本格的な改正案の策定が進み、今国会に提出されているという次第です。 昨年秋の臨時国会で提出されるはずだったバージョン(「2019秋版」といいます)と、今国会で提出されているバージョン(「2020春版」といいます)が異なるためです。 極めてシンプルな内容でした。 1.検察官の定年を65歳に引き上げる 2.省略(国公法への読み替え規定) 3.省略(国公法への読み替え規定) 4.次長検事と検事長は63歳以降は平の検事になる 5.第4項について、次長検事と検事長は、内閣が定めた事情がある場合、1年以内の期間、引き続き次長検事又は検事長として仕事ができる 6.さらに、1年後も引き続き内閣が定めた事情がある場合、引き続き定年まで次長検事又は検事長として仕事ができる 7.省略 8.これらのことは内閣又は法務大臣がそれぞれ決定する。 かなり長くなりました。 ただし、特例として、内閣の定めるところにより、次長検事と検事長は引き続きその職位で仕事ができ(第5項)、またこれを定年までさらに延長することができる(第6項)とされています。 【追記】以上を踏まえて、現行法と改正法で変更される点を表で確認してみたいと思います。 現行法でも解釈によって適用されることになった勤務延長の規定も、改めて明文で盛り込まれることになっています。 【追記終了】 ここまでが端的に現状の整理でした。 ここから、巷間騒がれている様々な誤解を解きつつ、それでもなお残る疑問から、問題の本質を明らかにしていきたいと思います。 そもそも黒川検事長の勤務延長はすでに閣議決定が行われ、進んでいます。 より正確には国家公務員法81条の3に基づく措置であり、この法案次第で勤務延長がなくなるというわけではありません。 ただし、この黒川検事長の勤務延長については、すでに述べたとおり、解釈変更の内容や手続を巡って違法性が指摘されているところであり、この法改正を行うことによって、そのような指摘を排除しようとする狙いはあるのかもしれません(次に述べる通り、法案の施行日を見る限り、そのような効果はないのではないかと考えますが)。 今回の法改正が成立したとして、その施行日は2022年4月1日です。 少し細かな話になりますが、お付き合いください。 ・黒川検事長のお誕生日は2月8日(今年で63歳)。 閣議決定で2020年8月7日まで勤務延長とした。 ・現検事総長の稲田伸夫氏は2018年7月25日就任であり、検事総長の平均在任期間は2年であることからすると、2020年7月25日までに退官されることが考えられる。 もっとも稲田氏が平均在任期間を超えて在任し、定年まで勤務を続けるとすると、稲田氏が65歳となる2021年8月13日まで退官しない可能性もあります。 以上を考慮すれば、黒川氏が検事総長になるかどうかは、そもそも施行されていない改正検察庁法の問題ではなく、むしろ稲田検事総長の退官次第ということになります。 稲田検事総長が定年まで退官しない場合、黒川検事長の勤務延長を再延長しなければならないことになります。 そもそも現在の検事総長のもとでも安倍総理に対する捜査など行われておらず、また、は進んでいます。 したがって、検察権と内閣の関係を、三権分立という観点から見る場合、その何が脅かされているのかを正確に理解しなければ、ミスリーディングになってしまいます。 行政府の中でも検察庁というのは特殊な組織であり、すでに述べたとおり、政治的な独立性を保たなければならない官庁です。 したがって、その独立性が脅かされないかどうかが重要です。 国家公務員法とは別に検察庁法が規定され、特別な規定が置かれているのはその独立性を担保するためです。 検察庁法は、様々な規定で法務大臣の権限を最小限に留めており、極めて難しいバランスを調整しながら緊張関係を保っています。 先に紹介した今年冒頭の解釈変更は、立法府が定めた検察庁法の解釈を、内閣限りで行うという点で、立法府への過度の介入をしているといわれるべきものとも言えるでしょう。 逆に考えれば、検察庁法改正案を立法府が議論することは、行政府と立法府との関係という観点からすればむしろ正しい姿であるともいえます。 しかし、他方で、検察官とは、準司法的作用も有する組織であり、裁判所との関係では、検察官が訴追しない刑事事件は(極めて例外的な場合を除いて)司法の場に置かれないわけです。 したがって、やはり冒頭に述べたとおり、検察庁の独立性は適切な司法の機能に繋がるわけです。 なお、検察庁法第15条は、「検事総長、次長検事及び各検事長は一級とし、その任免は、内閣が行い、天皇が、これを認証する。 」として、法務大臣ではなく内閣によってこれらの人事を行うものとしている。 つまり、法務大臣に従属するという立場ではなく、むしろ同等以上の立場として扱っているとも解されます。 なお、これらの人事も、もちろんその運用にあっては内閣による恣意的な任免が行われないように配慮されなければならないことは言うまでもありません。 実際には人事院規則によって細かな要件が組み立てられます。 しかし、問題は国会の委員会答弁を通しても、どのような場合に役職定年制の特例が認められるのか、「内閣の定めるところ」がどういうものなのかが決まっていません(今後議論していくとのこと)。 まだこれが決まっていない状況で、法律が内閣に全て白紙委任するというのは確かに危ういと言わざるを得ません。 問題の本質」でもう少し詳しく述べます。 これは複雑高度化する社会の中で、すべてを立法府に委ねるのではなく、余白を作りながら、現場で最も専門的に事象を扱う行政官に細かなオペレーションのマニュアルを委ねるという思想です。 これ自体は非常に合理的です。 当然ながら、これらの委任を受けた政省令等が法律を超えることをしてはいけません。 多くの方のTweetで、この法案を止めれば安心という雰囲気を感じざるを得ませんでした。 しかし、そうではありません。 この法案に限らず、立法府が成立させた法律を行政府がどのように運用するのかは、国民の不断の意見表明と監視という努力によって最適化されていきます。 違法な行為が行われた際に、法の番人である裁判所が判断するというのは事後的な対応にすぎません。 より重要なのは、「私たちはあなた達の運用を見ていますよ」というメッセージを発し続けることで、行政府が間違った方向に行かないように予防することです。 4.疑問 以上を踏まえて、私が今回なお疑問に思っていることを記します。 1.役職定年制に対する特例を設ける場合の運用指針・基準は何なのか 個人的には、人生100年時代において、民間と同じく国家公務員も定年を延長することに異論はありません。 さらに、人件費削減のために役職定年制を設けることにも賛成ですし、もっというと、特殊なケースで役職定年制に特例を設けることにも賛成です。 しかし、どうもまだこの「特殊なケース」の判断軸が見えてこない。 見えてこない以上、白紙委任ということになりますが、それはここまで述べてきたような、検察庁法が調整する極めて困難なバランスという歴史の努力を水泡に帰しかねないものになりえます。 細かな要件まで規定されずとも、少なくとも委員会、本会議の中で運用に関する基準などを議論し、これが決まるまでは法案の採決には進まないという意思決定が行われるべきではないでしょうか。 (そもそも法務大臣が定める準則という文言もある中で、なぜ法務大臣が答弁の場に現れないのかも多分に疑問です。 ) あとは非常に細かな点ですが、興味深い点として、検察庁法改正案第22条第6項で、「内閣の定めるところにより」という極めて法文上珍しい定め方をしているのも説明を求めたい点です。 「内閣府令で定める」などではなく、「内閣」としているあたり、やはり検察官の独立性を担保するために、法務大臣や内閣府に従属せず、内閣が任免と同じように決定するということでしょうか。 2.なぜ「この時期に」検察庁改正案の審議をするべきなのか 内閣委員会では、特措法を含め新型コロナウィルスに関する質疑を優先すべきではないかと考えます。 また、すでに前国会からの持ち越しを含めて数十本以上の提出法案がある中で、この改正案は緊急度、優先度としては低いものだと考えます。 あえて、このコロナ禍でこれを進めないといけないのであればその説得的な理由が説明されるべきです。 そこからどのような事情変更が起きて、検察庁法改正案第2項~第8項が追加されたのかの説得的な理由が説明されるべきです。 5.問題の本質 思いの外、長文になってしまいましたが、この問題に対する私の疑問は4に述べたとおりです。 そして、現時点で私がこの問題の本質と考えるのは、 国民に誤解や疑心を与えたまま進めてしまってよいのかという点です。 実際、理解できることもありますし、4. に述べたとおり疑問に思うこともあります。 しかし、法曹の端くれとして感じるのは、少くない国民が、政府や検察庁に対して、疑心暗鬼になったり、不信を抱いたまま法案が採決されてしまう点です。 大げさな話ではなく、検察庁という組織に対する信頼が揺らぎかねない事象であり、これは総理大臣や法務大臣がどのような認識であろうとも、Twitter上で国民の多くが疑念を投げかけたとおり、どのような認識を国民が受けるか、持つかというのは国民次第です。 検察庁は、行政府の一員ではあるものの、国会議員や内閣総理大臣、閣僚に対しても捜査権限、起訴権限を持つ組織、官庁であり、政治の安定性、信頼性を担う重要な機構です。 その信頼を揺るがしているということ自体はファクトであり、重く受け止めていただいた上で、今国会でどのような対応をしていくのかを注視したいと思います。 参照: ・:実はこれが一番見やすく、またこれくらいしかないのではないかな…。 (もちろん全部信じているわけではないですが) (NHK NEWS WEB) (文藝春秋digital) (ニッポン放送 NEWS ONLINE 【2020. 10[23:05]追記】 ねぼすけさん、obonuさんよりコメントでご質問、ご指摘があったため、追記として、私の理解を以下、述べさせていただきます。 お二人が言及していらっしゃるのは、「」のうち、附則(検討)第16条第1項の以下の条文かと存じます。 第十六条 政府は、国家公務員の年齢別構成及び人事管理の状況、民間における高年齢者の雇用の状況その他の事情並びに人事院における検討の状況に鑑み、必要があると認めるときは、新国家公務員法若しくは新自衛隊法に規定する管理監督職勤務上限年齢による降任等若しくは定年前再任用短時間勤務職員若しくは定年前再任用短時間勤務隊員に関連する制度又は新検察庁法に規定する年齢が六十三年に達した検察官の任用に関連する制度について検討を行い、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。 (なお、「」の「第十一 附則」でも、この点は「公布の日から施行することとするほか、必要な施行期日を定めるものとすること」と丁寧に(とてもわかりづらく)公布日から施行される点が記載されています。 ) さて、これについてですが、附則に記載されているのは、「新検察庁法に規定する年齢が六十三年に達した検察官の任用に関連する制度」についての検討を引き続き行うということであり、同制度は改正された後の新検察庁法が施行されない限りは効力を有しないため、やはり検察庁法改正案にある施行日以前に検討を越えた何らかの措置が行われるという解釈はできないかと存じます。 ただし、これも法解釈の一つに過ぎないため、ぜひ議会において、本当に検討を越えた何らかの具体的な措置が行われないのかを議論し、政府の答弁を引き出していただきたいと思います。 これがまさに、立法事実を積み重ねていく行為であり、後に勝手な解釈で運用が行われない「運用方針・基準の明確化」であります。 【追記終了】.

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