齋藤尚彦。 斎藤明彦

「GRヤリス」乗ってわかったトヨタの本気度

齋藤尚彦

「電子制御多板クラッチセンターデファレンシャル」の構造を見ることができる。 左が前輪側、右が後輪側 「東京オートサロン 2020」で世界初公開され、大きな話題となっているのがトヨタ自動車の新型車「GRヤリス」。 このGRヤリスのために作られた専用ボディを持ち、直列3気筒 1. ベースとなる新型車「ヤリス」は、トヨタが高効率を目指して作り上げた「M15A-FKS」型 1. 5リッター直列3気筒 ダイナミックフォースエンジンを搭載。 GRヤリスは、WRC(世界ラリー選手権)ホモロゲーション獲得モデルでもあるため、規定に合わす形で排気量を1. 6リッタークラスに拡大。 1618ccの排気量から、最高出力200kW(272PS)、最大トルク370Nm(37. 7kgfm)を発生する。 直列3気筒 1. 6リッター直噴ターボエンジン「G16E-GTS」の燃焼室まわり。 果たしてM15A型からどのようにして排気量を増やしたのだろうか? ちなみに記者はGRヤリス試乗時に、開発主査であるGAZOO Racing Company GRプロジェクト推進室 齋藤尚彦氏のふんわかとしたプレゼン資料から「車重は1200kg~1300kgの範囲にあり、パワーウェイトレシオは4. 5~5. トヨタは愚直な企業でもあるので、車重の中間値を1250kg、パワーウェイトレシオの中間値を4. トルクも370Nmとなっていることから、3. 7リッター自然吸気エンジンレベルのトルクをターボ過給によって叩き出している。 6リッターで3. 7リッターレベルのトルクを出すには、相当高い過給圧を実現しているとみるのが妥当だろう。 M15A型は80. 7ccになる。 3cc。 9mmとなる。 燃焼室の拡大、過給による圧縮比の低下などで完全新設計となることから、G型エンジンとなっているのかもしれない。 価格は発表となったものの、まだまだ謎の多いGRヤリスだ。 7mm。 1気筒あたりの排気量は計算上約539. 384cc、これが3気筒で1618. 1815ccということになる。 ダイナミックフォースエンジンは、ボアストローク比が1. 2のロングストロークを特徴としているが、このG16型は1. 025となり、ほとんどスクエア。 ストロークを短くすることで回転数限界も上がっていると思われ、ハイパフォーマンス系のデザインになっている。 7mmというストロークは、3S-Gよりも回転限界は上げにくいが現代の技術を考えると同程度の回転限界パフォーマンスはあるかもしれない。 圧縮比も10. 5と発表されており、これは500cc系ダイナミックフォースエンジンのガソリンモデルの13という数字と比べて低くなっているが、トルクも370Nmとなっていることから強大な過給を行なっていることは想像でき、10を超えているのは微少過給域でのドライバビリティを考えるとうれしいところだ。 7mm 圧縮比:10. これは排ガス規制の違いなどから来るものかもしれないが、いずれにしろ最高のパフォーマンスを持つGRヤリスは日本仕様になるわけだ。 欧州トヨタの発表では面白い数値もでており、パワーウェイトレシオは4. HPのままでkg、つまり車重を求めると4. 9kg。 これも仕向地で異なってくる数字なのでなんとも言えないが、この車重を日本仕様のPS馬力で計算すると4. 開発主査の齋藤氏はプロトタイプ試乗会のときに、パワーウェイトレシオは4. 5~5. この欧州トヨタのリリースには、ボディ構造は新型ヤリスのTNGA GA-Bプラットフォームをフロントまわりに、プリウスなどのGA-Cプラットフォームをリアまわりに採用とも記されており本当に興味深い。 GRヤリスが量産車という概念を超えた、化け物的なクルマであるのは間違いないだろう。 センターデフ「電子制御多板クラッチセンターデファレンシャル」。 左が前輪側で、右が後輪側。 このGR-FOURシステムでは、前後のトルク配分を100:0~0:100まで可変できるポテンシャルを持ち、GRヤリスではノーマル(60:40)、トラック(50:50)、スポーツ(30:70)の3つのトルク配分を用意。 センターコンソールのボタンによって自由に切り替えることができる。 このシステムのキモとなっているのが、前後のトルク配分を行なう新開発の電子制御クラッチを用いたセンターデフ「電子制御多板クラッチセンターデファレンシャル」(以下、電制センターデフ)になる。 そしてこの新開発の電制クラッチのカットモデルが展示されているのだ。 新開発の電制センターデフは、リアデフの直前に配置。 フロントエンジンというヤリスの前後重量配分の改善に貢献しているように見えるとともに、フルタイム4WDを基本とするシステムのため、より積極的に後輪(後軸)にトルクを持っていこうとの意思を感じる。 電制センターデフは、370Nmという強大なトルクに対応するためか、トルク配分を行なう湿式多版のクラッチプレートを12組+3組(に見える)という形で装備。 写真に写った3組のプレートのインナプレートの溝がそれほど鋭角ではないように見える。 ここまで書いて外れたら恥ずかしいが、そういった見方を楽しめるのもカットモデルのよいところだろう。 現場で齋藤主査にあれこれ聞いたものの、現状発表されている以上の情報はさすがに語っていただけなかった。 ただ、この新開発の電制センターデフのカットモデルは世界初公開とのこと。 現地に行ける方は、GRヤリスの各部とともに、この電制センターデフのカットモデルを確認するのがお勧めだ。 日本のトヨタのリリースでは、この電子制御カップリングを「電子制御多板クラッチセンターデファレンシャル」と記しており、記事初出の部分ではセンターデフであるとした。 ところが欧州トヨタのリリースでは、センターデフ形式より軽くなると記してある。 いろいろ謎が深まった部分だ。 フロントにPTO(Power Take Off)を設けて電子制御カップリングを使う4WDシステムは、その構造上一般的に100:0から50:50(ここで直結ですね)までのトルク配分を行なう。 ところがGRヤリスでは、日本も欧州も「100:0から0:100が可能」としている。 まず、ここがこのシステムの疑問点になる。 おそらくその秘密は欧州トヨタのリリースにある、「フロントデフとリアデフのギヤ比を変える」という部分にあるのかもしれず、これにより30:70をベースとしながら、フロントへの駆動を「電子制御多板クラッチセンターデファレンシャル」という装置で増やしていっているのかもしれない。 現時点で分かっていることをお届けしてみた。 日本のトヨタのリリース、そして欧州トヨタのリリースをプリントアウトして、東京オートサロンでスタッフに確認してみてほしい。 記者よりも詳しい話が聞けるかもしれない。

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トヨタ新型車「GRヤリス」。スポーツ4WDシステム“GR

齋藤尚彦

で初公開された「GRヤリス」(写真:木谷宗義) 2015年、トヨタは大きな組織変更を行った。 事業ごとに独立採算制とする「カンパニー制」を採ったのである。 その中でトヨタ最小のカンパニーが「GRカンパニー」だ。 ほかのカンパニーと違うのは、作りの考え方である。 東洋経済オンライン「自動車最前線」は、自動車にまつわるホットなニュースをタイムリーに配信! 記事一覧はこちら GRカンパニーの友山茂樹プレジデントは「われわれはマニュファクチュアである以前に『レース屋』です。 ワークス体制(TOYOTA GAZOO Racing)でモータースポーツ活動を行い、そこで得たノウハウや知見/人材を車両開発に直接的に投下していくのが、われわれのクルマ作りの基本となります」と語る。 狙うはWRC「ダブルタイトル」獲得 そんなTOYOTA GAZOO Racingのモータースポーツ活動は、ニュルブルクリンク24時間耐久レース(2007年〜)、WEC(FIA世界耐久選手権:2012年〜)、WRC(FIA世界ラリー選手権)の3カテゴリーがメインだが、その中でもWRCの歴史は古い。 トヨタとラリーの関係は、1957年に豪州一周ラリーにトヨペット・クラウンで参戦したのが始まりだ。 その後、1973年にWRCが設立された当初から参戦を行い、1999年にF1参戦を理由に撤退するまでに、4回のドライバータイトルと3回のマニュファクチャラーズタイトルを獲得している。 その後、豊田章男社長は2015年にWRC復活を宣言。 2017年、18年ぶりに「TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team」として復活を遂げた。 2020年シーズンも「ヤリスWRC」での参戦が発表されている、日本人ドライバーの勝田貴元選手も参戦(写真:) ラリーカーとしては異例となる短期間で開発されたヤリスWRCは、初年度からその実力を発揮し、2018年はマニュファクチャラーズタイトルを獲得。 2019年はオット・タナック選手がドライバーズタイトルを獲得したが、マニュファクチャラーズタイトルはあと一歩の所で逃してしまった。 もちろん、2020年シーズンの目標はダブルタイトルである。 ちなみにWRCを戦うヤリスWRCは、ベース車に対し大きく手を加える部分もあるが、レギュレーションによって手を入れられない部分も多い。 つまり、ベース車両の素性が、ラリー車の性能を左右する部分も多いということだ。 2017年のフィンランドラリー取材の際に、GRカンパニーエグゼクティブ・アドバイザー(当時)の嵯峨宏英氏は、次のように語っている。 「ベース車の課題の1つは『重いこと』。 チーム代表のトミ・マキネンに言われたのは『頑丈すぎるよね』でした。 軽ければ戦闘力は上がるので、次期モデルは軽くて頑丈なクルマにする必要があるでしょう。 現時点でそれができていないのは認識しており、次のモデルにつなげていきたい」 さらにTOYOTA GAZOO Racing World Rally Team唯一の日本人エンジニアである川村倫隆氏は「ラリーカーと市販車の共通性は38%(その中の8%が改修を実施)です。 当然、ベース車の素性が上がれば、そのパーセンテージは上がります。 そのために、すべての情報はトヨタにフィードバックしています。 それをやらなければこのプロジェクトの意味がありません」と言う。 今回、東京オートサロン2020で世界初公開された「GRヤリス(別名:ヤリスGR-FOUR)」は、ズバリWRCの知見/ノウハウを盛り込んで開発されたロードカーだ。 「失われた20年」を取り戻すために 開発コンセプトは「Strong Sport Car」で、具体的には「次期WRCホモロゲモデル」「素のままでローカルラリーを勝てる実力を備える」「誰でも買えるスポーツモデル」という3つのキーワードが掲げられた。 開発の陣頭指揮を執る齋藤尚彦氏はこのように語る。 東京オートサロン2020では1986年に登場したトヨタ初のスポーツ4WDである「セリカ GT-FOUR」も展示された(写真:木谷宗義) 「まず、トヨタはスポーツ4WDの『技術』も『技能』も失っていたため、ゼロから学ぶ必要がありました。 われわれは失われた20年を最短で取り戻すために、モータースポーツから学ぶ開発を選択しています。 強いクルマ作りはWRカーの開発を行うTMR(トミ・マキネン・レーシング)から、市販車では考えられない評価はレーシングドライバー/ラリードライバーから学びました」「GRヤリスは、1999年に生産終了した『セリカGT-FOUR』以来20年ぶりの復活となる『スポーツ4WD』です。 トヨタにとって非常に重要なミッションを任されたものの、開発時は生みの苦しみを嫌というほど味わいました」 モリゾウこと豊田章男社長が運転訓練に「スープラ(80系)」を用いていたことは有名だが、実はAWDの運転訓練はセリカGT-FOURではなくスバル「インプレッサWRX STI(GRB)」で行っていた。 豊田社長は「ラリーの練習に励んでいた経験から、スバルのすばらしいAWD技術を肌で感じてきました」と語るが、その裏を返すと「セリカGT-FOURでは通用しない」と感じていたのだろう。 齋藤氏は「これはトヨタのエンジニアにとっては非常に悔しい出来事でした。 しかし、われわれにスポーツAWD作りのノウハウがないので仕方ないですよね……。 この悔しさも開発の糧となっています」と語る。 そこで、現時点で明らかになっていることを中心に解説していきたい。 3ドアのワイドボディに大径タイヤを装着 5ドアボディよりもドアの枚数が少ないことによる軽量化に加えて、WRCのレギュレーション「ホイールハウス改造の規則」に対して有利に働くそうだ。 ただ、単純にドアの枚数を減らしたのではなく、ボディラインも異なり、全高もノーマルの1500-1530mmに対して1460mmと低められる。 ちなみにフェンダーは、トレッド拡大(何と86よりもワイド!)と大径タイヤを収めるためにワイド化されており、全幅は1805mmだ。 エクステリアは、ベースのヤリスにはない3ドアボディだ。 最大の特徴は、シフトレバーの前につく、前後駆動力配分を調整するドライブモードスイッチだ。 また、JBL製オーディオシステムや予防安全パッケージ(トヨタ・セーフティ・センス)、大人が乗っても似合うインテリアコーディネートなど、日本のコンパクトスポーツハッチが苦手としていた部分に関しても抜かりはない。 パワートレインはWRカーと同じく1. 6Lターボながら、GRヤリス用に開発された直列3気筒を搭載する。 専用ブロック/ヘッド、ボールベアリングターボ、排気バルブ大径化などモータースポーツ由来の技術を数多く採用することで、272ps/370Nmのハイパフォーマンスとクラス最軽量/最小サイズを両立している。 「ラリーカーをお手本にチューニングを行い、低回転域のトルクとレスポンスに注力しており、気難しさはないのに速いユニットに仕上がっています」と齋藤氏は言う。 「GRヤリス」は全車に6速MTを採用(写真:トヨタ自動車) トランスミッションは、欧州向けに設定される6速MTをベースに、GRヤリス用に改良。 素早いシフト操作での正確性に加えて、ダイレクトなフィールにもこだわったそうだ。 また、シフトアップ/ダウン時にエンジン回転数を合わせる「iMT制御」も採用される。 AWDシステムはセンターデフを用いず、リアにシンプル/軽量にこだわったハイレスポンスカップリング(電子制御多版クラッチ式)を採用。 前後駆動配分は100:0〜0:100までアクティブに変更されるが、3つのドライブモード(ノーマル 60:40、スポーツ 30:70、トラック 50:50)がセレクト可能。 WRCレギュレーションに合わせた専用フロアを採用 プラットフォームは、フロント周りがノーマルのヤリス用となる「GA-B」だが、リアセクションは1クラス上の「GA-C」をドッキングした専用品だ。 ちなみにWRCのレギュレーションに「エンジンの搭載位置はクランクセンターから25mmの範囲でしか動かせない」とある。 つまり、ベース車のエンジンの搭載位置が重要となるが、「GA-Bでなければこのパッケージは成立しなかった」(齋藤氏)とのことだ。 また、WRCのレギュレーションに「ボディの1番低い部分にサイドシルの平行線を落としたところが基準面となり、そこを基準に一定の範囲でサスペンション取り付け点を決定できる」とあるが、GRヤリスはそこも有利に働くよう、専用フロアになっている。 加えて、より軽量/低重心のためにボンネットとドアはアルミ製、ルーフはCFRP製(ローコストカーボン)の「マルチマテリアルボディ」を採用する。 さらに、バッテリーをリアに配置することで、重量配分の適正化も実施された。 サスペンションは、フロント:ストラット/リア:ダブルウィッシュボーンを採用。 ブレーキは、対向ブレーキキャリパー(フロント:4ポッド、リア:2ポッド)+大径ローター(フロント:2ピース、リア:ドラムインディスク)が奢られる。 クルマ作りは「高い目標」と「課題の明確化」のためにトヨタのさまざまなカンパニーと連携しながら開発を進める「クロスファンクションチーム」で行われたという。 具体的に言うと、商品企画は「GRカンパニー」が担当するが、エンジン・駆動系は「パワートレインカンパニー」、ブレーキ制御は「先進技術開発カンパニー」、シャシー/ボディ/実験などは「コンパクトカーカンパニー」が行っている。 モリゾウこと豊田社長は、次のように語る。 「86はラリーでもレースでも私の大事な相棒です。 スープラもその名にふわさしいクルマとして復活させることができましたが、心の中には『トヨタが自ら作るスポーツカーが欲しい』と言う想いがありました」 「GRヤリスは『勝つためにトヨタが一から作ったスポーツカー』です。 これまでのトヨタ車は一般ユーザーのためのクルマを造り、それをレースに使えるように改造してきましたが今回は違います。 初めからレースに勝つため、普段お客さまが乗るクルマとはどうあるべきか? そんな発想で開発したのがGRヤリスなのです」 応答性のよさは「ランエボ」並み 筆者は、世界初公開に先駆け、GRヤリスのプロトタイプに試乗することができた。 ターマック(富士スピードウェイ内のモビリタ)では市販に限りなく近いプロトタイプだったが、グラベル(ダートの特設コース)では、現行ヴィッツのボディにGRヤリスのコンポーネントが組み合わされた初期のテスト車両に、開発中のラリー用パーツ(強化クラッチ、クロスミッション、サスペンション)と、ラリータイヤが装着された仕様だった。 エンジンは、小排気量ターボながらもターボラグはなく、低回転から湧き出るフラットなトルク特性とレスポンスのよさ、そしてレッドゾーン(7000rpm)までストレスなく回る気持ちよさを備える。 試乗車は本調子ではなかったようで、スペックほどのパフォーマンスは感じなかったものの、アクセルを踏んだときの応答性やツキのよさは、2. 6速MTは、ストロークこそやや長めだが、軽いタッチでカチッと決まるフィーリングは、横置きMTで最良の仕上がりと言っていい。 フットワークは、「軽さは正義」であることを実感。 重量は非公表だが、前後オーバーハングが短いメリットが生きているようで、体感上は1200kgを切るイメージ。 ターマックは路面がウエットなうえに、低速かつRがキツい、ジムカーナのようなコースレイアウトだったが、セオリーどおりに走る限りは4WDを感じさせない素直なハンドリングで、リアの安定性も非常に高い。 と言っても、単なる安定志向のハンドリングとは違い、コーナー進入ではドライバーの操作次第でアンダーもオーバーも可能な自在性を備えていた。 ただ、限界がかなり高いので、その姿勢を維持するためにはドライバーの腕も要求される。 ちなみにドライブモードは、「ノーマル:安定方向」「スポーツ:ノーズが入りやすい」「トラック:バランスのよさ」と、各モードの差は非常にわかりやすかった。 数cm単位のコントロールも可能 しかし、今回のウエット路面に関して言うと、どのモードもリアに対してもう少しフロントが粘ってくれると、一体感や安心感はさらに高まると感じた。 また、シートはホールド性やかけ心地などは問題ないものの、ターマックではやや腰高に感じたのが少々気になった。 グラベルでのテスト走行の様子(写真:トヨタ自動車) 一方、グラベルでは、路面のグリップが低いことも相まって、思い切って振り回して走らせることができた。 また、絶対的なスピードは高いはずだが、クルマの動きがスローに感じるぐらいの余裕も感じられた。 ダートを走って1つ気になったのは、ペダルレイアウトだ。 素早い操作時に、アクセル/ブレーキペダルの間隔がやや広いのが気になった。 クルマがよくなると細かいところが気になってくるのだ。 このあたりは衝突安全にも関わるので変更は難しいと思うが、開発陣も認識しているようなので改善を期待したい。 ターマック/グラベル共に短い時間の試乗だったので、今回はその性能の一部を味見した程度にすぎないが、総じて言うとレベルは非常に高い。 基本は安定志向だが、ドライバーの操作でさまざまな顔を見せてくれるうえ、ドライバーが失敗したらその失敗をシッカリ教えてくれる……つまり、「クルマとの対話」がしやすいのだ。 ちなみにまだ章男社長の「合格」をもらっていないそうなので、市販直前まで開発は続くだろう。 価格は396万円〜456万円 GRヤリスは、トヨタが最も苦手とする「少量生産」にチャレンジしたモデルでもある。 スポーツカー継続のために86はスバル、スープラはBMWとタッグを組んだが、GRヤリスはトヨタで自社生産される。 齋藤氏は「スポーツカーの開発/生産は特別なことではなく、現地現物を基本とし、ムリ/ムダ/ムラをなくす『TPS(トヨタ生産方式)』を愚直にやることがいちばん大事でした」と語っている。 生産は元町工場のスポーツカー専用ライン「GRファクトリー」を新設。 タクトタイム600秒、ベルトコンベアのない特別なラインで1台ずつ丁寧に生産される。 東京オートサロン2020では「GRヤリス」の公開とともに2020年のWRC参戦体制が発表された(写真:トヨタ自動車) WRカーのホモロゲーションを取得するには、ベースとなるモデルが「連続した12カ月間に2万5000台を生産すること」が必要となる。 トヨタ関係者の中には「特殊なモデルだから」と心配する人もいるようだが、世界でも数少ないモータースポーツ直系のスポーツ4WDへの期待は高い。 2万5000台は、あっという間に売り切ってしまうだろう。 まさに「令和の4WDスポーツ」の誕生だ。 GRヤリスを購入することは、トヨタのWRC活動に間接的に協力することになる。 筆者もその1人になりたいと思っている。 外部サイト.

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トヨタ自動車が、ヴィッツの後継となる新型ヤリスに対して、その高性能版である「GRヤリス」の国内投入を明らかにした。 このたび「GRヤリス」プロトタイプモデルを試乗する機会を得たため、想定スペックと乗り味をスペシャルレポートとしてお届けする。 「GRヤリス」プロトタイプモデルの試乗は、平坦な舗装のクローズドコースで行われた。 2月10日に発売される新型ヤリスは5ドアボディだが「GRヤリス」は3ドアボディを採用。 リアフェンダーは張り出した専用デザイン。 ルーフ後端は下方へと大きく落ち込んでいる。 TOYOTA GAZOO Racing(TGR)が展開するスポーツカーシリーズ「GR」の、GRスープラに続くグローバルモデル第2弾に位置付けられる「GRヤリス」を、トヨタ自動車が2020年の東京オートサロンで世界初公開することを発表した。 このクルマは3ドアボディをベースに、オーバー250PSの直列3気筒1. 6Lターボと、高応答カップリングを組み込んだ4WDシステムを搭載した、いわゆる「テンロク4駆ターボ」のホットハッチ。 軽量・高剛性のプラットフォームと高性能パワートレインが組み合わされており、スポーツカーと呼んでもいいパフォーマンスを発揮すると思われる。 国内ではモータースポーツベース車として長年使用されてきた、ランサー・エボリューションXの生産終了に続き、EJ20型エンジン搭載のWRX STIも国内向け生産が終了となったが、それに代わる存在となりうる高性能ターボ4WDの登場と見ていいだろう。 この「GRヤリス」は軽量化と空力性能を優先して、国内仕様のカタログモデルにはない3ドアボディを選び、ボンネットやドア、リアハッチにアルミ材、ルーフにはカーボン素材を採用。 新開発の1. 6Lターボエンジンには、ボールベアリングターボの使用や排気バルブの大径化などにより、軽量化と高出力を高次元で両立していると思われる。 4WDシステムは、車体の大幅な軽量化を実現させるために、重量が増すセンターデフではなく、応答性の高いカップリングを使用し、前後輪のトルク配分を「アクティブ」に変更できる機能を持たせているという。 前後のトルク配分は、センターコンソールに置かれたダイヤルスイッチで調整が可能で、前後60対40の「ノーマルモード」、前後30対70の「スポーツモード」、前後50対50の「トラックモード」を選択できるようになっていた。 今回、この「GRヤリス」のプロトタイプモデルが報道陣向けに公開され、テストコースで試乗する機会が与えられた。 あくまでもプロトタイプなので、エンジンや4WDシステム、サスペンションなどはすべて暫定仕様だが、平坦なウェットターマック、そしてフラットダートのテストコースでステアリングを握った印象を報告したい。 2月10日発売が発表されている新型ヤリスは、新たにTNGAプラットフォームを採用しており、ノーマルモデルでもフットワークの良さが光るコンパクトカーに仕上がっている。 このノーマルモデルについては、すでにサーキット走行でその素性の良さは確認していたが、「GRヤリス」はまったく別物のスポーツマシンに変身していた。 エンジンは直列3気筒のメリットを最大限に生かして一気に回転が上がり、高回転域でもトルクフルかつコントローラブルで緩急自在の走りを堪能できた。 4WDシステムも各モードを試してみたが、定常円旋回的なコーナリングでは「スポーツモード」が扱いやすく、アンダーステアに苦しむこともなく、クルマの姿勢がうまく作れずラインから外れてしまってもリカバリーしやすかった。 一方で「トラックモード」は手ごわく、クルマの姿勢を積極的に作れるスキルを身に付けた人が『タイムを狙う』モードと言えそうだ。 開発を担当するトヨタ自動車GRプロジェクト推進部主査の齋藤尚彦氏は、 「全日本ラリーやダートトライアル、ジムカーナへの参戦を想定した評価も進めていますが、それだけでなく、高性能ロードゴーイングカーとしてパフォーマンスを楽しんでいただけるクルマとして位置付けています。 WRCで活躍するヤリスをイメージしながらドライブする楽しさも提供していきたいですね」 と語ってくれたが、そんなユーザーにとっては、街乗りを快適にこなせるノーマルモードも欠かせないだろう。 サスペンションに関しては、今回は平滑な路面の走行のみだったのであまりチェックできなかったが、ややロールを許容しながら路面をとらえて駆動力を生かす方向性が感じられた。 ロール速度はしっかり抑えられているので、8の字走行時の揺り返しなどでも収束は良く、ある程度速度を上げても姿勢を乱されずに走ることができた。 また、サイドブレーキを引いたときにはリアの駆動が切れる機能も備わっており、サイドターンにも対応している。 一方、ダートコース用のプロトタイプは、ヴィッツのボディに新型のエンジンおよび4WDシステムを搭載した実験車両だったが、その操作性の良さはすぐに実感できた。 グラベル競技への使用を想定しているということで、前後デフには機械式LSDが組み込まれ、トランスミッションのギヤ比は変更、ファイナルギヤ比も低めに設定されていた。 数値などは未公開ながら、よりトラクションを得られるセッティングとされていた。 ロールケージが組まれたインテリアは、試験車両らしくかなり違う雰囲気だったが、走り出すと浮き砂利が積もったダートでもしっかり加速でき、アクセルを踏んだ状態の姿勢は安定している。 そのぶんステアリング操作に集中できるのでコントロールも難しくなく、ややイン側に向けた姿勢を維持することもできた。 ステアリング操作が遅れてもスピンしにくく、逆にアンダーステアでふくらんでしまってもラインに戻しやすく、このあたりは駆動システムに助けられていることが実感できた。 4WDモードに関しては、「スポーツモード」なら姿勢制御やリカバリーがしやすいが、「トラックモード」はトラクションを生かした加速は鋭くなるがアンダーステアを出してしまったときのリカバリーは難しくなる。 舗装路と同じく「トラックモード」は上級者向けという印象を受けた。 国内のダートトライアル選手権に参戦している前田蔵人氏もGRプロジェクト推進部主幹として開発に加わっているが、 「ミニサーキットやジムカーナ、ダートトライアルなどで楽しんでもらうにはどうしたらいいか、を考えてセッティングを進めてきました。 参加型モータースポーツの素材として使ってほしいですね」 と嬉しいコメントをしてくれた。 トヨタ車ではセリカGT-FOUR以来の4WDターボ搭載のスポーツモデルとなる「GRヤリス」。 前出の齋藤氏によれば「少量生産でも、しっかり収益を確保しながら作り続けること」も目標に掲げられているということで、大いに期待できるニューウェポンの登場と見て間違いないだろう。 GAZOO Racing Company GRプロジェクト推進部の齋藤尚彦氏(左)と前田蔵人氏。 東京オートサロンで世界初公開される「GRヤリス」と2月10日に発売される新型ヤリス。 ボンネットと左右ドア、バックドアにはアルミ素材、ルーフにはカーボン素材を奢る。 大型キャリパーが垣間見える。 エンジンはスポーツ専用に新開発された小型軽量の直列3気筒1. 6Lターボを横置き搭載。 パーキングブレーキはベース車両の新型ヤリス同様にレバー式を採用していてひと安心。 吊り下げ式の3ペダルレイアウト。 クラッチペダルの左側には大型のフットレストを装備。 トランスミッションは6速MT。 シフトの奥にはモードを選べるダイヤルスイッチを配置。 バッテリーはトランクスペースのフロアに搭載。 アクセスしやすくメンテナンス性も良好。 ヴィッツボディの試験車両には、グラベル競技を想定したカスタマイズが施されていた。 「GRヤリス」は2020年の東京オートサロンで1月10日(金)に世界初公開される予定だ。 フォト/佐藤靖彦、JAFスポーツ編集部 レポート/田畑修、JAFスポーツ編集部 記事内の車両は発売前のプロトタイプのため、実際に発売される車両とは仕様や数値が異なる可能性があります。

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