おうと 読む 漢字 画数 多い。 本を読むと眠くなる

「名付け……「あおと」に漢字を」のまとめ

おうと 読む 漢字 画数 多い

本を読むと眠くなる 酒本杉太(さかもとすぎた)のおじいちゃんは、昼寝が好きだった。 今日も縁側で気持ちよさそうに居眠りをしている。 食事と排泄と大好きな時代劇を見る時以外は、たいがい眠っている。 これだけ眠れば、夜は目が冴えてしかたないだろうと杉太には思えるのだが、夜もちゃんと眠っているのだった。 うららかな春の日差しはほんわかと生暖かく、杉太のおじいちゃんでなくとも、縁側は居眠りをするのにちょうど良かった。 それで杉太も縁側に来てみた。 今日は日曜日、小学校も休みだ。 安楽椅子で居眠りしているおじいちゃんは、後ろから見ると死んでいるようにも見えた。 しかし前から見るとゆるやかに前後に動き、確かに呼吸をしているようで、なんとなく安心したりする杉太だった。 なにしろ半目を開いて白目を覗かせ、口を人差し指二本分入るほど開けた状態で、普通であれば力のゆるんだ頬が垂れ下がるであろうところ、唇の両端が上がり気味で薄笑うような顔をしているのだ。 そして、BSアンテナのようにやや天空を仰いでいる。 この表情、この体勢で、いびきひとつたてずすやすやと、気味が悪いほど静かに眠っている。 モノクロ写真で撮影したら、インカの石像にも似ている。 この口から魂が抜け出すのだとしたら、それはきっと漫画のように白っぽい塊となって肉眼で見えるのではないだろうか。 面白い顔だなぁ、と杉太はいつも思う。 見ると、おじいちゃんの膝の上に一冊の古ぼけた本が置いてあった。 A6文庫本サイズだが、ハードカバーで表紙は布張りという凝った装丁。 その茶色っぽい表紙は色あせている感じで、染み汚れや色むらも目立つ。 そして、タイトルは読めなかった。 画数の多い難しい漢字を使っているようだが、布張りの表紙がかすれたりつぶれたりしていて、文字の大雑把なディテールしか確認できない。 大きく三文字、蔓草のような飾り枠の中で、すっかり腐っていた。 杉太は手に取って、だいたい三分の二ぐらいのところにしおりがはさんであるのを見つけて、驚いた。 いつも眠ってばかりいるおじいちゃんが、いったいいつ本を読んでいるのか、まだ小学生の杉太には見当もつかなかった。 これはいったい、どういう本なのだろう。 ふつふつと湧き出した疑問に支配されて杉太は、古めかしい本を手に持ったまま、足音を忍ばせて縁側から離れた。 おじいちゃんは青空に顔を向けて、すやすやと深く寝入っていた。 自分の部屋で、杉太は興奮を抑えきれないまま、最初のページを開いてみた。 ものすごいタブーを犯すような気分で、それは少し大人になる気分にも似ていた。 本文は、見るからに奇妙だった。 文字が、渦巻き状に書き連なっているのだ。 ぱっと目、平仮名は混じらず、すべて漢字のようだった。 難しい本だな、と杉太は思った。 本の難しさのせいか。 その日は、それの内容を理解する間もなく、杉太は眠ってしまっていた。 次の日に母親から起こされるまで、眠っていた。 おじいちゃんは朝から縁側で眠っていた。 どうやら昨日からずっとそうしていたようで、いよいよ危ないんじゃないかという気がしたが、こういったことも今回が初めてではなかった。 杉太はその本をランドセルの中に隠し持って、学校に向かった。 先生にでも聞けば、この本がどういったものなのかわかるかもしれない、と思っていた。 だが自分の席で取り出してみているところ、クラスメイト数人に見つかって取り囲まれた。 いつもつるんでいる悪戯仲間だった。 「よう、ドッチモ」 酒本と杉太、どっちも名字のようなので、杉太はドッチモと呼ばれていた。 「ああ、おはよう、御隠居」 杉太をドッチモと呼んだその男、名を神司光士(しんじこうじ)という。 もともと彼がドッチモと呼ばれていたのだが、杉太がその名を引き継いだため、御隠居と呼ばれるようになった。 もうひとり加藤道助(かとうみちすけ)というのがいるのだが、そういった流れで、彼は助さんと呼ばれていた。 「なんだ、ぼろっちいその本」 「うちのじいちゃんの本だよ」 「じじいの本か。 見せてみろよ」 「難しいぜ」 「読んだのか」 「ううん。 難しくて読めなかった」 「よこせよ。 見せろよ」 「うん、いいけど。 破るんじゃねぇぞ」 「わかってるよ」 しかし、最初のページを開いて御隠居約一名、立ったまま白目を剥いて眠りこんでしまった。 ずいぶんシュールな絵で、杉太と道助はしばらく静かに約一名を見つめ続けた。 そこいら界隈だけ空気が灰色に染まった感じになった。 杉太が本を取り返し、道助が肩をゆすってあげると、光士は意識を取り戻した。 なんだ、俺、どうした」 「寝てた」 「なんで?」 「知らない。 寝てたよ、完璧に。 白目で。 すっげぇ怖い顔だった」 御隠居と助さんの会話をなんとなく聞き流しながら、杉太はぼんやりと手の中の本を眺める。 表紙だけ。 どうも薄気味悪くて、開く気になれない。 「どうしたの、その本?」 声をかけてきたのは、クラスで一番の美少女、大柳田杜子(おおやなぎだもりこ)だった。 しみひとつない色白の肌に薄ピンク色の唇、子犬のような大きいくりっとした黒い瞳と日本人形のようにまっすぐ切りそろえた長い黒髪、あどけなさの中にどこか大人びた仕草を見せる柔らかそうな手。 で、これがずいぶんな近眼で、目立つ黒縁の眼鏡を手放せない。 「うちのじいちゃんの本なんだ。 なんか、変な本」 「ふうん。 ねえ、ちょっと貸して。 私、本が好きなの」 杜子はクラス委員と兼任の図書委員で、やたら分厚い海外文学やなんかをあらかた読破していて、最近は歴史書だか哲学書だかにハマっていた。 みんなが校庭で遊んでいる休み時間にも、窓際でひとり静かに小難しそうな本のページをめくっている姿が、杉太にはちょっとあこがれだった。 「い、いいよ」 「ありがとう、杉太くん」 杜子が微笑んだ。 とたんに、杉太の悪友たちが、わああっと杉太を茶化した。 杉太は顔を真っ赤にしたが、杜子はまったく気にしていない様子で嬉しそうに本を持っていった。 そして自分の席に戻り、最初のページを開いた。 しばらく、静かにしていた。 分厚い眼鏡の奥で、その黒い瞳は、何を見ているのか。 と、次の瞬間、美少女杜子は机に突っ伏した。 すやすやと可愛らしい寝息を立てている。 眼鏡がずれて、素顔が少しだけ覗いていて、頬のあたりから乱れ髪がかかっているのが、また可愛い。 「ドッチモ、お前いったい、何を持って来たんだ?」 「さあ。 わからない」 杉太はしばらく、ぼんやりと杜子の横顔を眺めていた。 そのとき教室に先生が入って来た。 青のジャージ姿。 杉太はとっさに杜子から本を取り返し、いつも携帯ゲーム機や漫画本やスナック菓子をそうするように自分の机に放り込んだ。 先生の一声で教室は一瞬ざわついてから、整然となった。 「出席を取るー。 と、その前に杉太」 「はい?」 「いま、何を隠したぁ」 「べつに」 「見てなかったと思っているんだろう。 見てたぞぉ、先生は。 大柳田から本を取っただろう。 正直に言え」 「違います。 僕の本です」 「お前がこそこそ持って来るような本を、大柳田が読むわけないだろう。 嘘をつくな、嘘を。 なあ、大柳田」 しかし、大柳田杜子はすやすやと熟睡していた。 声をかけた先生は、一瞬言葉を失った。 杉太は光士や道助と目配せをした。 「とにかく、いま隠したものを見せろ。 見るぞ、見に行くぞ」 先生はそう言いながら、杉太の所へ大股に歩いて来た。 そして、机の中にある物をすべて出せ、と言った。 杉太は真っ先に、おじいちゃんの本を出してみせた。 先生は疑問と戸惑いに表情をゆがめた。 面白い顔になった。 「なんだ、これは?」 「大柳田さんに貸した本です」 「見せてみろ」 「はい、先生」 先生は本を受け取り、そして、杉太とその仲間が期待した通り、最初のページをめくった。 立ったまま、動かなくなった。 杉太は、御隠居や助さんと一緒に、教室を抜けて町に出た。 「すげえ。 おもしれえな、お前の本」 「うん。 なんだかわからないけど、すごい」 杉太は歩きながら手の中の本を、閉じたまま、じっくりと見つめてみた。 古ぼけた本。 一見、ただそれだけのもの。 しかし杉太は、それの不気味な魔力を目の当たりにしてきている。 こんなものが現実にあるのか、知らなかった。 と、小学生の杉太は素直に感心した。 それが自分の手にあるということ、もとはと言えば自分のおじいちゃんがそれを持っていたこと。 実にドラマチックな出来事だった。 こうなると、テレビで見ているスーパーヒーローもあながち偽物ばかりではなく、あるいは自分もがんばれば将来はヒーローになれるのだろうか、なんてことまで考え始める。 本を開いてページを見つめるだけで、正義のヒーローに変身できるのだ。 しかし、学校の授業をエスケープしているようでは、正義ヒーローへの道は遠いのかもしれない。 杉太が見たのは、漢字らしき文字が渦巻き状に印刷されている、最初のページだった。 どうやら杜子や光士、また先生が見たのも同じページだったようだ。 本とは最初のページから順に見るものだから、自然なことかもしれない。 そこに印字されていた文字を杉太は、なんとか思い出そうとしてみた。 断片はなんとなく思い出せるし、渦巻き状の文字配置も大雑把な映像で思い浮かべることができる。 だが、正確なところは、思い出せるものではなかった。 ただ、杉太の記憶が確かならば、それを見た瞬間だけは一ページ分全部の文字が鮮明に把握できたように思えるのだった。 「ねえ。 これ、どんな字が書いてあったっけ」 それで杉太は、同じく本を見ている光士に尋ねてみた。 光士は、こう答えた。 「う〜ん。 なんか、見た時ははっきりしてた気がするけど。 今はなんとなく思い出せないや」 「やっぱり? 僕もそうなんだよ。 見た時は、なんか、はっきり見えた」 「なあ。 俺にも見せてよ」 助さんこと道助が言った。 道助はまだ本を見ていない。 杉太も光士もそれを見ているし、瞬時に寝てしまった他は体調がおかしいということもない。 「痛くないよな?」 「寝たまま転がったりしなければな」 助さんの質問には御隠居が答えた。 杉太は、道助に本を渡した。 道助はしばらく深呼吸したり準備運動したり目を閉じて精神集中したりあれこれやっていたが、光士が道助の手から本を奪い取り、最初のページを開いて道助の目の前にかざした。 道助は、口を「あ」の形に開けた瞬間そのままで、立ったまま深い眠りに落ちた。 転がったりはしなかった。 光士が本を閉じて杉太に返し、それから道助の側頭部を小突いた。 道助が夢の世界から戻ってきた。 「すごい」 道助は言った。 「さわやかな目覚めだ」 「それって、小学生の台詞とは思えないな」 光士が言った。 道助は「そうかな?」と真顔で言った。 「でも、だいたいわかったよ。 これの仕組み」 「本当かよ」 「速読って知ってるか。 本をものすごく速く読めるってやつ」 杉太は知らなかったが、光士が知っていると答えた。 「あれって、文字を一文字一文字読んでいるんじゃなくて、ページ全体を絵みたいにして一瞬で脳に焼き付けるんだ。 一度脳の中におさめた絵は、瞬時に文字として把握できるんだって。 だから周辺視野が鍛えられる」 「お前、本当に小学生か?」 道助は「そうだよ」と真顔で言った。 「この本は、速読の原理で、印刷された本文が映像として瞬時に脳に焼き付けられるんだ。 すると脳は瞬時にそこに書いてあることを理解できる。 ただ、あれってどう見ても普通の日本語じゃなかっただろう。 コンピュータのプログラムみたいに、脳の働きを直接制御できるんだぜ。 きっと」 「すげえな、お前って。 天才じゃないの」 光士はそう言って感心したが、杉太には道助が何を言っているのかまったく理解できず、眠くなった。 眠くなった杉太は、なんとなく、そのへんを歩いていた野良猫に本を見せた。 野良猫は一瞬目を丸くしてから、そのままスイッチが切れたようにだらしなく眠ってしまった。 「なあ、助さん」 「なんだ、ドッチモ」 「猫ってさ、速読できるの?」 言われて道助と光士も、猫と本をかかげている杉太に気づいた。 二人とも、言葉を失ってその場に立ちつくした。 杉太と光士と道助の三人は、近所のコンビニエンスストアに入っていた。 買い食いが目的ではない。 店のオーナーらしいやや年配の店員が、レジの作業をしながら目線で三人を気にしている。 アルバイトらしい若い店員は、まるで無関心に品出し作業を続けている。 三人の目的は、十円コピーだった。 問題のページを、コピーしようとしているのだ。 もちろん悪戯目的なので、少しでもたくさんコピーしたほうが面白いことになる。 だが彼らの小遣いなどたかが知れているし、その全財産をつぎ込んで量産するほど気合いを入れているわけでもない。 ひとまず、百円出し合って十枚ほどコピーしようということになっていた。 しかし、コピー機が止まった。 「あれ?」 「壊したのか、ドッチモ」 「そうじゃないけど。 動かないよ、これ」 「壊した」 「違うってば」 通常、レーザープリンター式の大型コピー機の場合、暖気運転や冷却ファンの低音ノイズが常に聞こえている。 だが本を乗せてコピーボタンを押して、隙間から漏れるCCDセンサーの光がページをスキャンし終えたあたりで、ぷしゅ、とかなんとか音を立てたのを最後に、そのコピー機は無音になった。 「壊した、壊した」 「壊したんじゃないよ。 壊れたんだよ。 僕の十円、食われた」 「いよっしゃ、俺にまかせろ」 光士と道助がコピー機を蹴飛ばしていると、店員が駆けつけた。 「壊したのか?」 「壊れたんだよ」 店員の質問に、三人は声をそろえて答えた。 店員は何か言いかけたが、苦笑いしてコピー機と向き合った。 そして、スキャナ部のふたを開け、三人がコピーしようとした原稿を手に取った。 もちろん、店員はそれを見た。 乾電池が切れたように動きを止めた店員から、杉太がそおっと本を取り返した。 「だいたい、わかってたけどね。 こうなること」 杉太の言葉に、二人は黙ってうなずいた。 コンビニエンスストアの各所には、防犯カメラが設置されている。 店の隅から監視しているものをはじめ、レジの上に設置されているものが目立つ。 杉太も光士も道助も、本のページを自分たちに向けないように持っているので、自然とそれは防犯カメラのレンズがとらえるようなアングルにひらめく。 店内の防犯カメラのうちいくつかが、人知れず機能を停止していた。 奥の事務所には、モニターがある。 たとえばレジや店内に店員の姿がなくても、レジで少し待っているとすぐに店員が来る。 レジ上のカメラが客の姿をとらえて、それを事務所で見ている店員が出てくるという仕組みになっている。 もちろん、この時はモニターが急に何も映さなくなって、他の店員が出てきた。 コピー機の前の店員に、何があった、と声をかける。 「僕たち、これをコピーしようとしていたんです」 杉太が、本を開いて見せた。 「これってさあ」 光士が、棒アイスをかじって歩きながら言った。 「世界征服とか、できちゃうんじゃないの?」 「それが御隠居様の台詞かね」 助さんが鋭いコメントを入れた。 が、助さんもポテチをぱりぱりとかじっている。 他にも、キャンディーやらチョコレートやら、ナントカモンスターカードやらといったものをかかえている。 「でも、世界征服って具体的に何をやるんだろうね?」 でかいペットボトルからコーラをラッパ飲みしながら、杉太が言った。 光士と道助は、うーん、と考え込んだ。 「べつに世界征服しなくても、この程度のことはできるしなあ」 杉太は言って、げっぷをした。 「ねえ御隠居。 テレビ局に持って行けば、俺たちすっげー有名になれるんじゃない?」 「アホかい、助さん。 んなことしたら、俺ら警察につかまるだろ」 光士は棒アイスの空ビニール袋をぴらぴらさせて言った。 「それに、こんなわけのわからないもの持ってるって世間に知れたら、真っ先に軍に目をつけられるぜ」 「なんで? 日本に軍はいないだろう」 「日本の軍もどきは、何もしないだろうさ。 それより、ペンタゴンとかKGBとか」 「ああ、TBSとかUSJとか」 「テレビ局や遊園地が何をするって?」 道助は真剣に首をかしげた。 「とにかく、ペンタゴンとかKGBとか、そういったやつだよ。 奴らに目をつけられたら、親兄弟から知り合いまで黒服の男たちに一生監視されるって。 俺らにはこんな本もすごいものだけど、奴らはUFOと知り合いなんだ。 きっと、もっとすごいもの知ってて、それを軍事利用するんで、世間に秘密にしているんだ」 「くわしいね、御隠居」 言って道助は、ポテチの空き袋を道ばたに投げ捨てた。 光士がそれを拾って、自分のポケットにねじこんだ。 「僕、思うんだけどさ」 杉太が言った。 「これ、おじいちゃんに返そうかと思うんだ」 「なんで?」 「おじいちゃんの本だから。 ずっと不思議に思っていたんだけど、これ、しおりがはさんであるんだよね。 途中のところに。 ここまで読んだってことだろう。 きっと、うちのおじいちゃんにしか読めない本なんだよ」 「ああ、なるほど」 杉太はずっと、しおりの位置が変わらないように注意して持っていた。 だが、今すぐ持って帰っても、学校が終わる時間にはまだ早いから、あれこれと疑われる。 それについては、他の二人も賛成だった。 だから、一日町をぶらついて、それから学校へ荷物を取りに戻り、そして家に帰る、という完璧な計画を立てるに至った。 教師たちの目を盗みながら無人の教室に戻った三人は、どこからか湧いて出た大柳田杜子に声をかけられて、驚いた。 「ねえ、杉太くん。 私、あなたにお願いがあるの」 黒い瞳を少し潤ませて、ずいぶん思い詰めた表情で、杜子は言った。 光士と道助が、またしても驚いた。 二人とも、なななんでこいつが、という顔をしていた。 「あの本を」 「え?」 「あの、不思議な本を、もう一度だけ私に貸して。 読ませて欲しいの」 「え。 いや、いいけど、なんで?」 「実は。 ……私、くやしかったの。 この私に読めない本があるのが、どうしても許せない。 これは、私に対する挑戦と理解したのよ」 杜子は可愛い顔のまま、こぶしだけグーに握っていた。 「おうちの本は全部読んじゃったし、図書館の本もほとんど読み終わっているの。 最近は外国語の本も読み始めているし。 どんな本も私は友達、最後まで夢中になって読んじゃうの。 それなのに」 杜子の声のトーンが、ふっと低くなった。 「その本を読んだ瞬間、私、寝てしまったわ。 はっきり覚えている。 次に気がついたら本がなくなっていて、先生が何か騒いでいたの」 杉太は、あははは、と半端に笑った。 杜子の瞳の奥に、青白く炎が燃え上がっているように見えた。 ちょっと怖かった。 「これは、私にとってありえない、あってはいけないことなのよ。 お願い、わかって」 「わ、わかった。 わかりました」 「じゃあ、本」 神妙な面持ちで本を受け取ってから杜子は、「もうひとつ、お願いがあるの」と言った。 「もし、私が眠ったら。 お願い、殴って」 「えええっ!」 「ちゃんと殴ってくれたら」 杜子は、杉太の耳元でささやいた。 「あとで、キスしてあげる」 杉太は、むしろ本一冊にそこまで執着する杜子に、今までとは違う距離感を感じた。 天使の顔をした悪魔にささやかれているようで、素直に嬉しい気持ちにはなれない。 威圧されるような形で、杉太は杜子に本を渡した。 本を開いた瞬間杜子は、うおお、とかなんとか言ったようだった。 が、立ったまま眠ってしまった。 杉太は、どうしようか一瞬迷ったが、そのままそっと本を取り返し、杜子ひとりを残して三人で静かに教室から去った。 「お前、さっきなんて言われたんだ?」 道助が杉太にたずねた。 「思い出したくない」 杉太は、そう答えた。 家に帰ってすぐ、杉太はおじいちゃんに本を差し出した。 このころになるとすでに薄気味悪くて、これ以上長く本を手にしていたくはなかった。 聞けば、おじいちゃんは今日一日この本を探していたという。 昨日もこの本がないために眠れなくて困った、と。 「おじいちゃん。 これ、なに?」 「ああ。 わしゃ重度の不眠症でな」 おじいちゃんが、語り始めた。 「いつも寝てるおじいちゃんが、不眠症?」 「ああ。 これは、漢方の医者にもらったんじゃよ。 どんな薬も効かんもんで、特効薬としてゆずってもらったんじゃ」 「これ読んで寝てるの?」 「おうとも」 「しおり、はさんであるけど」 「同じページばかり見ていると、そのうち効果が薄れて来るんじゃよ。 そしたら、次のページを読む。 最後まで読み終われば、また最初のページが使えるというわけじゃ」 「ねえ、おじいちゃん」 「なんじゃ、杉ぼう」 杉太はおじいちゃんから杉ぼうと呼ばれていた。 「それって、なに?」 「ああ、わしゃ重度の不眠症でな。 漢方の医者にもらったんじゃよ」 おじいちゃんは、語り始めた。

次の

[北野 桜仁]さんの幼少〜晩年の運勢を占う。赤ちゃんの名付けや姓名鑑定に無料で利用できます。名前の字画から姓名鑑定 〜名付けと姓名鑑定~才能・恋愛・金運などを画数から鑑定〜

おうと 読む 漢字 画数 多い

このページでは、画数の多い漢字の一部を画数別にまとめました。 ただし、辞典のような、漢字についての研究の結果を確定させるといった意味合いは持っていません。 特に画数については、例えば、くさかんむりの3画(艹)と4画(艹 , 艹)の違いがある異体字や、字体のちょっとした違いで画数が違う異体字が多くあったり、また、部首を何画と数えるかなど画数に複数の考え方がある漢字もあり、文献によって違いが出ることもあるため参考としてご覧ください。 このページでは、日本の『大漢和辞典』、中国の『漢語大字典』、『ユニコード(Unicode)』を基本的参考文献とし、これらに国字なども交えて編集しました。 それぞれの文献で、画数の違う字体を収載していたりする場合は出来るだけ注釈を付けるようにしましたが完璧ではありませんのでこちらも参考としてご覧ください。 『 大漢和辞典』は、日本最大(出版元の大修館書店によれば「世界最大」)の漢和辞典と称される諸橋轍次著による漢和辞典で、『諸橋大漢和』と称されることもあります。 このページの表の中で、例えば「大漢和:1234」のように表示してあるのは、『大漢和辞典』での漢字番号です。 『大漢和辞典』で詳細を調べる場合にお役立てください。 ユニコード(Unicode)は、世界中のすべての文字に固有の番号をつけ、どのような環境のコンピューターにおいても共通に文字を表示させようとするもので、そのためのコードです。 漢字については、『CJK統合漢字』として中国語(Chinese)、日本語(Japanese)、韓国語(Korean)の各規格を統合した漢字20,902字が制定され、これに、「拡張」として追加が行われています。 ユニコードでの画数などのデータは、『The Unicode Consortium』の『』を利用し取得しています。 『 漢語大字典』は、中国で1986年に初版が刊行された字典です。 説明の中に出てくる『 戸籍統一文字』は、法務省が戸籍のオンライン手続に使用することを目的として整理した文字のことで、文字の情報を検索する仕組みが公開されています。 このページでの漢字は、基本的にユニコードを使用して表示していますが、お使いのパソコンやブラウザーによっては表示されない場合があります。 出来るだけ全てを表示させるため、一部画像を利用しています。 画像で表示した漢字の一部には、別途、括弧の中にユニコードを設置し赤文字で着色し表示しました。 例:( 𬚩)(これは、53画の「いわくら」という字です) ただし、これも漢字として表示されないブラウザーがあります。 ブラウザーによって異なりますが、次のような表示になる場合があります。 スマートフォン、タブレットなどでは表示されない文字が多数あります。 表の中が空白になっていたり、上記のように記号のような形が表示されたりします。 音読みをカタカナで表記し「 青」で着色しました。 また、常用漢字、教育漢字では訓読みをひらがなで表記し「 赤」で着色しました。 意味についても表記してある漢字がありますが、読み方や意味はここに表記したものが全てではなく、また、一部未調査の漢字もあり、資料によって異なる場合もありますので参考としてご覧ください。 学習や研究、業務などにお使いの際は、辞典・専門書などでご確認ください。 この、79画とされる「おおいちざ」という漢字は、江戸時代中期の戯作者で浮世絵師の、 恋川春町 ( こいかわはるまち )が創作したと言われるもので、恋川春町の黄表紙『 廓 費字盡 ( さとのばかむらむだじづくし )』(天明3年・1783年刊)に出てくる。 江戸時代の漢字学習のために広く普及した、近八郎右衛門編の『 小野篁歌字盡 ( おののたかむらうたじづくし )』という本があり、は、このパロディーとされる。 この字は、『大漢和辞典』にも『ユニコード』にも収載されていない。 文献では、右側に「 大いちざ」と書かれ、左側に「 おそろいの なかで はくのが おういちざ」と、川柳のような口調の説明が書かれている。 「歒」の字は、『大漢和辞典』によれば、「テキ、チャク」と読み、「笑うこえ」という意味を持つ「赥」の字と合わせて、「子供の喜び笑うさま」という意味の「歒赥」(「てきけき」と読むか)という熟語があるとされる。 ただし、ここでの「歒」は、遊里で客の相手の遊女を指す「 敵娼 ( あいかた ) 」のことではないかとされる。 大一座何ン ぞかしらのくづれなり 三 五月女のあをむいて見る大一座 三 大一座多藝なやつは油むし 三 大一座先陳すでに堀へつき 四 大一座かさばつかりと遣リ 手いひ 四 大一座黒とそら色はわけなり 五 大一座禿てんでにつれて行 五 にがすなとひつはつて行大一座 六 大一座いたゝいてのむやつもあり 六 恋無常なとゝおとける大一座 六 品川は杓子ぐわほうな大一座 六 大一座ふきよせた程うわぞうり 六 大一座なけなしの美女もらわれる 八 町代ハ油むしさと大一座 八 大一座らう下へ遣リ てけつを出し 九 盃で運の定マ る大一座 十 ぬしづかつしやいとおとける大一座 一一 大一座内をあんじてしかられる 一二 大一座はかまがついて安くする 一四 舟宿へ上下をつむ大一座 一四 大一座人のふんどし貳三人 一五 大一座焼場の分も二人揚 一五 大一座下戸ねたかつてしかられる 一五 大一座しろうと方と茶屋でいひ 一五 大一座松葉の中へつつはいり 一五 禿まで生醉にする大一座 一六 ちつきよして居る迄か出る大一座 一六 大一座女郎ハかつち/\うけ 一六 神樂過うまし乙女へ大一座 十七 二人リ ツヽひつそりとなる大一座 一七 大一座中にしろうと五六人 一八 ゑんりよ過るとくずをとる大一座 一九 大一座木辻は能のかへり也 一九ス ひつきをおくりふとゞきな大一座(二〇 新吉のしやべつなくあげる大一座 二〇 馬鹿も有ものよし町へ大一座 二〇 大一座美へさすおしのつよいやつ 二〇 町内のぎりさへしむと大一座 二一 おんとむらいのありかたさ大一座 二一 大一座三歩をまぜて氕がつまり 二一 大一座下戸は女郎をあらすなり 二一 大門へかり門の無イ 大一座 二二 ありかたの御とむらいや大一座 二二 すがゝきも文も立ツ てく大一座 二三 大一チ座あみ笠ゑんりよすべき事 二三 大一座壹番首をいどみあい 二三 しやうちせぬ下女どこぞでハ大一座 二三 御法から花ちる里て大一座 二四 【知識】• 辞典類収載で最大画数の漢字。 (2015年7月時点での当サイト調べ)• 日本の『大漢和辞典』と『戸籍統一文字』、中国の『漢語大辞典』、さらに『ユニコード』に収載されている漢字の中で、最も画数が多いのは上記の64画の2つの漢字。 明治前期の政治家、 小野梓 ( おのあずさ )の幼名に龍が四つの文字が使われ、その名は 「 一 ( てついち )」であったという。 この、36画の「 おしゃべり」という漢字は、江戸時代後期の戯作者、 式亭三馬 ( しきていさんば )が創作したと言われるもので、式亭三馬著の滑稽本『 小野 譃字盡 ( おののばかむらうそじづくし )』(文化3年・1806年刊)に出てくる。 式亭三馬著の『 小野 譃字盡 ( おののばかむらうそじづくし )』は、江戸時代中期の戯作者で浮世絵師の、 恋川春町 ( こいかわはるまち )が書いた黄表紙『 廓 費字盡 ( さとのばかむらむだじづくし )』(天明3年・1783年刊)の影響を受けたものとされ、『 廓 費字盡 ( さとのばかむらむだじづくし )』は、江戸時代の漢字学習のために広く普及した、近八郎右衛門編の『 小野篁歌字盡 ( おののたかむらうたじづくし )』という本のパロディーとされる• 文献では、右側に「 おしゃべり」、下に「 べちゃくちゃ」、左側に「 くちかずの たんとが しゃべり」と書かれている。 この字は、『大漢和辞典』にも『ユニコード』にも収載されていない。 この、「石」という字を重ねた「 さいのかわら」という漢字は、江戸時代後期の戯作者、 式亭三馬 ( しきていさんば )が創作したと言われるもので、式亭三馬著の滑稽本『 小野 譃字盡 ( おののばかむらうそじづくし )』(文化3年・1806年刊)に出てくる。 式亭三馬著の『 小野 譃字盡 ( おののばかむらうそじづくし )』は、江戸時代中期の戯作者で浮世絵師の、 恋川春町 ( こいかわはるまち )が書いた黄表紙『 廓 費字盡 ( さとのばかむらむだじづくし )』(天明3年・1783年刊)の影響を受けたものとされ、『 廓 費字盡 ( さとのばかむらむだじづくし )』は、江戸時代の漢字学習のために広く普及した、近八郎右衛門編の『 小野篁歌字盡 ( おののたかむらうたじづくし )』という本のパロディーとされる• 文献では、右側に「 さいのかわら」と書かれ、左側には「 さいのかわらは つみあぐるなり」と書かれ、賽の河原で石が積み上げられた様子を漢字にしたことが分かる。 「石」を使った字としては、石偏に三年で『 しんぼう』(三年はしんぼう)、石を小さく書いて『 つぶて』(小さくかくつぶて)などの字も見られる。 この字は、『大漢和辞典』にも『ユニコード』にも収載されていない。 教育漢字の中の画数の多い漢字(20画、19画)• 教育漢字の中で最大画数の漢字は、20画の「議」「競」「護」。 教育漢字は小学校6年間のうちに学習する漢字の総称で、1,026字。 (2020年度施行学習指導要領による)• ここでの読み方は、小学校で学習するものだけをあげた。

次の

日本一画数の多い漢字を知っていますか?世界一画数が多い漢字は○○○画

おうと 読む 漢字 画数 多い

名乗り 人名訓 とは 古くからある名前の訓読みのこと。 「一」を「かず」「はじめ」と読む類。 名乗りも名付けの参考にしてみるとよいでしょう。 外国から入ってきた文字(漢字)に対して、似た意味の言葉を当てて呼んだもの、もしくはその言葉に対して意味の似た意味の漢字を当てたもの。 戦においては武士が味方や敵に向かって自分の姓名・身分・家系などの素性、戦功、戦における自分の主張や正当性などを大声で告げること。 武士の作法として、名乗りが行われている間に攻撃することは良しとされなかった。 戦場では自分の勇名や戦功を喧伝するためなどに行われ、味方の士気を上げるためや相手方の士気を挫いたり挑発するためにも行なわれた。 『平家物語』巻十一「弓流」において、平氏方の藤原景清が源氏方の美尾屋十郎を倒し、逃げるところを捕まえようとして引きちぎった錣を長刀に刺し掲げて上げた勝ち名乗りの「遠からんものは音に聞け、近くば寄って目にも見よ」の口上は慣用句にもなっている。 利用規約この利用規約は当サイト(名付けと姓名判断)をご利用いただく方に守っていただくルールです。 「名付けと姓名判断」は、字画をもとに無料で名前占いができるサイトです。 本格的な占いは、字画だけでなく、血液型、生年月日をはじめ、親族、兄弟などの周りの状態や住環境まで含めて、さまざまことを考慮して鑑定されるものと思います。 そのため、本サイトの運勢結果は参考程度にお読みください。 本格的な鑑定はセイン名鑑定を専門的に行っている方にご相談ください。 当サイト(名付けと姓名判断)で表示される結果は、占いである以上、悪い結果がでる場合や良い結果が出ることもあります。 中には表示された結果に不満のある内容が表示される場合もあるとは思いますが、決してお名前を誹謗中傷するものではありません。 入力された文字から画数の自動計算によって得られた運勢となります。 また、本サイト(名付けと姓名判断)の姓名判断によって得られた結果で、第三者を誹謗又は中傷したり名誉を棄損するような行為を禁じます。 サイト利用者が本ウェブサイトのコンテンンツを利用したことで発生したトラブル、損害について、本サイト(名付けと姓名判断)は一切責任を負いません。 この規約にご同意いただけない場合は「名付けと姓名判断」をご利用いただくことはできませんのでご了承ください。

次の